目次
1. はじめに
Pythonのバージョンをダウングレードする必要性
Pythonは、プログラミングやデータサイエンスで広く使用されている言語ですが、時には特定のバージョンを利用する必要があります。以下のような理由でバージョンをダウングレードするケースがあります:- ライブラリやツールの互換性問題 一部のライブラリやフレームワークが特定のPythonバージョンのみをサポートしている場合があります。たとえば、旧バージョンのTensorFlowはPython 3.9以前でのみ動作することがあります。
- プロジェクトの要件 チームで開発する場合、プロジェクト全体で統一されたバージョンを使用することが求められる場合があります。
- 安定性の確保 最新バージョンがリリース直後である場合、安定性に欠けることがあるため、既に安定している旧バージョンを利用することが望まれることもあります。

2. Pythonの現在のバージョンを確認する方法
現在のPythonバージョンを確認する重要性
Pythonのバージョンをダウングレードする前に、現在インストールされているバージョンを確認することが重要です。これにより、システム上のPythonの状態を把握し、問題なく切り替えができるようになります。また、環境変数や仮想環境に依存する場合、複数のバージョンが混在していることもあるため、確認作業が欠かせません。コマンドラインを使用したPythonバージョンの確認
Pythonのバージョンを確認する方法は、主にコマンドライン(ターミナル)を使用します。以下にOS別の手順を示します。WindowsでPythonのバージョンを確認する方法
- コマンドプロンプトを開く
- Windowsキーを押し、「cmd」と入力して「コマンドプロンプト」を選択します。
- Pythonのバージョンを確認するコマンドを入力 次のいずれかを入力します:
python --version
または python3 --version
- 出力を確認する 例:
Python 3.11.5
macOSでPythonのバージョンを確認する方法
- ターミナルを開く Finderから「アプリケーション > ユーティリティ > ターミナル」を選択します。
- Pythonのバージョンを確認するコマンドを入力
python3 --version
- 出力を確認する macOSでは、システムにデフォルトでインストールされているPython 2系も存在する可能性があります。その場合、Python 3系を利用する場合は必ず
python3
を指定してください。
Linux(Ubuntuなど)でPythonのバージョンを確認する方法
- ターミナルを開く キーボードショートカット(Ctrl + Alt + T)でターミナルを起動します。
- Pythonのバージョンを確認するコマンドを入力
python3 --version
- 出力を確認する 例:
Python 3.9.13
インストール場所の確認(環境変数やパス)
バージョン確認後、必要に応じてインストール場所を確認しましょう。これにより、複数のPythonバージョンが存在する環境でも、適切にバージョンを切り替えることが可能です。Pythonのインストール場所を確認するコマンド
- Windows:
where python
- macOS/Linux:
which python3
注意点
- バージョンが正しく表示されない場合 環境変数やパスの設定に問題がある可能性があります。この場合は、パス設定を確認し、正しいPythonバイナリが参照されるように設定を修正してください。
- 複数バージョンがインストールされている場合 同じ環境で複数のPythonバージョンが共存していると、意図したバージョンが利用されないことがあります。この場合は、仮想環境を利用することをおすすめします(詳細は後述)。

3. Pythonのダウングレード手順(OS別)
Pythonをダウングレードする目的に応じた手順の選択
Pythonのダウングレードは、使用しているOSに応じて手順が異なります。以下では、Windows、macOS、Linuxの各OSにおけるダウングレード方法を詳しく解説します。公式サイトのインストーラーやpyenv
などのツールを使う手順を分かりやすく説明します。3.1 Windowsの場合
手順1: 古いバージョンのインストーラーをダウンロード
- 公式サイトにアクセス Python公式ダウンロードページにアクセスします。
- 目的のバージョンを検索 ページ下部の「View the full list of downloads」をクリックし、過去バージョンのリストから必要なバージョンを選択します。
- 適切なインストーラーをダウンロード
- Windows用の「Executable Installer」を選択。
- 64bit版か32bit版かを確認して適切なインストーラーをダウンロードします。
手順2: インストール
- 既存のPythonをアンインストール(必要な場合)
- コントロールパネル > 「プログラムのアンインストール」から既存のPythonを削除します。
- 新しいバージョンをインストール ダウンロードしたインストーラーを実行し、「Add Python to PATH」にチェックを入れてインストールを進めます。
手順3: 環境変数を確認
- 環境変数が正しいか確認
- 「Windowsキー + R」 → 「sysdm.cpl」と入力 → 「環境変数」タブを開きます。
PATH
にPythonのインストールパスが含まれているか確認。
- Pythonのバージョンを再確認
python --version
3.2 macOSの場合
手順1: pyenvをインストール
- Homebrewの確認 macOSではHomebrewを利用します。ターミナルで以下を入力してHomebrewがインストールされているか確認します。
brew --version
インストールされていない場合は公式サイトを参照してインストールしてください。- pyenvのインストール ターミナルで以下を実行します:
brew install pyenv
手順2: Pythonバージョンのインストール
- インストール可能なバージョンを確認
pyenv install --list
必要なバージョンを確認し、以下のコマンドでインストールします: pyenv install 3.9.7
- グローバルバージョンを切り替え
pyenv global 3.9.7
- バージョンを確認
python --version
3.3 Linux(Ubuntu)の場合
手順1: update-alternativesを利用
- Pythonのインストール済みバージョンを確認
python3 --version
- 新しいバージョンを追加 以下のコマンドで特定のバージョンをインストールします:
sudo apt install python3.x
- デフォルトバージョンを切り替え
sudo update-alternatives --config python3
表示されるリストから使用したいバージョンを選択します。手順2: PPAを利用(必要な場合)
特定のバージョンがリポジトリにない場合、PPA(Personal Package Archive)を追加します。- PPAを追加
sudo add-apt-repository ppa:deadsnakes/ppa
- バージョンをインストール
sudo apt update
sudo apt install python3.9
注意点
- バージョン管理を明確に 複数のバージョンをインストールする場合は、
pyenv
や仮想環境を活用し、プロジェクトごとに異なるバージョンを使用することをおすすめします。 - 依存関係に注意 システムで動作している他のアプリケーションが影響を受ける場合があるため、事前に確認してください。

4. 仮想環境を活用したPythonバージョン管理
仮想環境を使う理由
仮想環境を利用することで、システム全体のPythonバージョンに影響を与えることなく、プロジェクトごとに異なるPythonバージョンやライブラリを管理できます。これにより、複数プロジェクトの互換性問題を解決し、ダウングレードの必要性を最小限に抑えられます。仮想環境の基本ツール
venv
- Pythonに標準搭載されている仮想環境管理ツール Python 3.3以降で利用可能。
- シンプルで軽量な仮想環境を作成するのに適しています。
virtualenv
- 外部ツールとして提供される仮想環境管理ツール venvよりも多機能で、Python 2系との互換性を持つ。
- 仮想環境の設定や管理を柔軟に行いたい場合に便利です。
pyenv-virtualenv
- pyenvに仮想環境機能を追加したもの 複数のPythonバージョンと仮想環境を統合的に管理できます。
仮想環境の作成と使用方法
venvを使用する場合
- 仮想環境の作成 ターミナルまたはコマンドプロンプトで、以下のコマンドを実行します:
python3 -m venv myenv
myenv
は仮想環境の名前です。任意の名前に変更可能です。
- 仮想環境を有効化
- Windows:
myenv\Scriptsctivate
- macOS/Linux:
source myenv/bin/activate
- 仮想環境の確認 仮想環境が有効化されると、プロンプトに環境名(例:
(myenv)
)が表示されます。
(myenv) $
- 仮想環境を無効化
deactivate
virtualenvを使用する場合
- virtualenvのインストール
pip install virtualenv
- 仮想環境の作成
virtualenv myenv
- 仮想環境を有効化/無効化 venvと同様の手順で操作可能です。
pyenv-virtualenvを使用する場合
- pyenv-virtualenvのインストール
brew install pyenv-virtualenv
- 仮想環境の作成
pyenv virtualenv 3.9.7 myenv
- 仮想環境の有効化
pyenv activate myenv
- 仮想環境の無効化
pyenv deactivate
仮想環境の活用事例
- プロジェクトごとに異なるPythonバージョンを使用 仮想環境を使うことで、あるプロジェクトではPython 3.9を使用し、別のプロジェクトではPython 3.11を使用するといった運用が可能です。
- ライブラリのバージョン固定
requirements.txt
を作成することで、仮想環境内でインストールしたライブラリのバージョンを記録し、再現性を確保します。
pip freeze > requirements.txt
- テスト環境の分離 開発環境と本番環境を仮想環境で分けて管理することで、テストやデプロイ時のミスを最小限に抑えることができます。
注意点
- 仮想環境の名前や場所を明確にしておくと、複数の環境を管理する際に混乱を防げます。
- 仮想環境を使用しても、システムPythonに依存する一部のツール(例: OS固有のパッケージ管理ツール)が影響を受ける場合があります。

5. 注意点とトラブルシューティング
ダウングレード時の注意点
Pythonのバージョンをダウングレードする際には、いくつかの注意点を押さえておく必要があります。適切な手順を踏まないと、システムやプロジェクトに予期しない問題を引き起こす可能性があります。5.1 依存関係の問題
- 影響範囲を確認する ダウングレードするPythonバージョンに依存するライブラリやツールが正しく動作するか確認してください。特に以下の点に注意が必要です:
- 現在利用しているプロジェクトで動作しているライブラリが、新しいバージョンのPythonにしか対応していない場合。
pip
を使用してインストールしたパッケージの互換性。- 対応策
- ダウングレード後にすべてのライブラリを再インストールします:
pip install -r requirements.txt
5.2 環境変数とパス設定の問題
- 症状 ダウングレード後に、Pythonコマンドが正しいバージョンを参照しない場合があります。これは環境変数やパス設定に問題があることが原因です。
- 確認方法
- Windows:
where python
- macOS/Linux:
which python3
- 解決策 パス設定を修正することで問題を解決できます。以下はWindowsでの手順です:
- 「システムのプロパティ」 > 「環境変数」 を開きます。
PATH
変数を編集し、ダウングレードしたPythonのインストールディレクトリが含まれているか確認します。- 不要なエントリ(古いパス)を削除します。
5.3 バージョン切り替えが反映されない問題
- 症状 ターミナルで確認したバージョンが意図したものと異なる。
- 解決策
- pyenvを利用している場合は、以下のコマンドを実行してバージョン設定を明示します:
pyenv rehash
また、システム全体で使用する場合はpyenv global
コマンドを使用します。
トラブルシューティングの例
エラー例1: 「Python not found」と表示される
- 原因 環境変数にPythonのインストールパスが設定されていない、または間違っている。
- 解決策 インストールパスを確認し、環境変数に正しいパスを追加します。
エラー例2: ライブラリがインポートできない
- 原因 ダウングレードによりライブラリが未インストール状態になっている。
- 解決策 必要なライブラリを再インストールします:
pip install ライブラリ名
エラー例3: 「No module named ‘pip’」と表示される
- 原因 pipがインストールされていない、または破損している。
- 解決策 pipを再インストールします:
python -m ensurepip
python -m pip install --upgrade pip
ダウングレード後の確認事項
- Pythonのバージョン確認 ターミナルで以下を実行し、正しいバージョンに切り替わっているか確認します:
python --version
- ライブラリの動作確認 主要なライブラリが正常に動作するか、プロジェクトを実際に動かして確認します。
6. まとめ
本記事の振り返り
本記事では、Pythonのバージョンをダウングレードする具体的な手順について、以下のポイントを詳しく解説しました:- Pythonのバージョン確認方法 各OS(Windows、macOS、Linux)でPythonの現在のバージョンを確認する方法を解説しました。
- OS別のダウングレード手順 Windowsでは公式インストーラーの利用、macOSでは
pyenv
を活用した手順、Linuxではupdate-alternatives
やPPAを使用したインストール方法を詳しく説明しました。 - 仮想環境の活用 プロジェクトごとに異なるPythonバージョンやライブラリを管理する方法として、
venv
、virtualenv
、pyenv-virtualenv
の使い方を紹介しました。 - 注意点とトラブルシューティング ダウングレード時に起こりやすい問題やエラーの原因と、その解決策について具体例を挙げて説明しました。
適切なPythonバージョン管理の重要性
Pythonのバージョン管理は、開発の効率性や安定性を大きく左右します。ダウングレードは一時的な解決策である場合が多いため、以下のような方法を取り入れることで、長期的な管理が容易になります:- 仮想環境を活用 プロジェクトごとに独立した環境を作成することで、システム全体に影響を与えずにバージョンやライブラリを柔軟に管理できます。
- pyenvの利用 複数のPythonバージョンを効率的に管理するツールを使うことで、ダウングレードやアップグレードの手間を最小限に抑えられます。
今後のアクション
- 手順に従ってPythonをダウングレード 本記事で説明した方法を参考に、適切な手順でバージョンを切り替えてみてください。
- 仮想環境を試してみる 仮想環境を利用することで、プロジェクトの効率的な管理を実現できます。特に新しいプロジェクトを開始する際は、最初に仮想環境を設定することをおすすめします。